ノーベル文学賞をアニー・エルノー氏が受賞しました。エルノー氏は、自らの体験を色濃く反映した自伝的作品を多数発表。近年、代表作『シンプルな情熱』と『事件』が映画化され、ふたたび高い注目を集めています。
『シンプルな情熱』はハヤカワ文庫より発売中。『嫉妬/事件』が11月2日刊行予定。
アニー・エルノー
Francesca Mantovani © Gallimard
1940年、フランス北部ノルマンディー地方のリルボンヌ生まれ。
1974年、作家としてデビュー。以後、すべてガリマール社から上梓し、父を語った自伝的な第4作『場所』で84年度ルノードー賞を受賞。つづく第5作『ある女』では母を語り、『シンプルな情熱』では一転して自己の性愛体験を語って大反響を呼び、ベストセラーのトップに躍り出た。
◉作風
自らの体験を色濃く反映した自伝的作品(オートフィクション)の書き手。
ストレートな文体で描く彼女は、現代フランス文学界で最も注目を集めている作家のひとり。
◉最近の話題
代表作『シンプルな情熱』を原作とする同名の映画が2021年に公開。
中篇「事件」を原作とする映画『あのこと(仏題はL'événement )』が、2021年のヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞(監督:オードレイ・ディバン)
自身の体験を基に人工妊娠中絶が違法であった1963年のフランスで、予期せぬ妊娠をした大学生の苦悩を描き出す作品です。
映画「あのこと」は12月2日(金)より日本で全国公開を予定しています。
そして、原作「事件」を所収する『嫉妬/事件』を11月2日にハヤカワ文庫として刊行予定です!
◉担当編集者より
アニー・エルノーは、自らの体験を小説に落とし込んだオートフィクションの作家として知られており、深層心理をえぐるような細やかな描写が読んでいて胸に迫ります。特に、先日映画化されベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した「あのこと」の原作となった「事件」は60年代、妊娠中絶が違法だった時代のフランスで妊娠してしまった大学生の苦悩と、闇で行われていた危険な堕胎手術が淡々と残酷に描かれています。早川書房では、こちらの「事件」を収録した文庫『嫉妬/事件』を11月2日に刊行予定です。どうぞお楽しみに! このたびの受賞、誠におめでとうございます。