栗本薫氏の遺志を継いで、グイン・サーガの続篇を書き継いでいこうとする、グイン・サーガ続篇プロジェクトは、2011年から、栗本氏の遺稿や続篇の連載を収録した『グイン・サーガ・ワールド』の刊行を開始しました。
『グイン・サーガ・ワールド』自体は、2013年に8巻で完結しましたが、この刊行中に「グイン・サーガ トリビュート・コンテスト」を実施いたしました。
いわば、あなたもグイン・サーガを書いてみませんか、というもので、このささやかなコンテストには、グイン・サーガへの愛にあふれた、さまざまな物語が寄せられたのです。
このコンテストから、2篇の優秀作が選出され、そのうちのひとりが、円城寺忍さんでした。
作品は、ケイロニアの皇女シルヴィアと、魔道師修業中のヴァレリウスとの交流を描いたエピソードで、のちの二人の過酷な運命を知るものにとっては、明るく、若いというより幼いような二人の交流に、胸が締めつけられるような思いを感じたものです。
その円城寺さんが、このたび、グイン・サーガの外伝でデビューすることになりました。
編集部に送られてきた原稿は、『黄金の盾』と題されており、外伝1巻『七人の魔道師』に登場し、グインと冒険をともにした踊り子ヴァルーサの物語をつづったものでした。
幼少期のヴァルーサから、豹頭王の子を身ごもるまでの、その数奇な人生があますところなく描かれ、グイン・サーガの世界に対する円城寺さんの思いが、物語の細部にいきわたった見事な作品で、本にして500ページ近いボリュームを一気に読ませる、力強さがひしひしと感じられました。
さっそく、天狼プロダクションの監修をいただき、外伝26巻として刊行することになったしだいです。
五代グインとも宵野グインとも、またちがった味わいの、円城寺グインの世界を楽しんでいただければと思います。
そして、またひとり、グイン・サーガの作家が誕生したことを、きっと栗本薫さんも喜んでくださっていると思います。