単行本

竜の王女シマー(ハリネズミの本箱)

魔法でみすぼらしい老女に身をやつした、「わたし」ことシマー。「友好の村」と呼ばれる寒村にやってきた彼女は、そこであるうわさを耳にする。村の宿屋にとまっている、なぞめいた「後家」についてのうわさだ。この後家こそ、わたしが長年追ってきた魔女、シベットにちがいない――シマーは苦々しい思いで、これまでのつらい日々をふりかえる。
 シマーの真のすがたは、竜の王女。「失われた海」という一族の王のむすめだ。だが、母がのこした魔法の品、夢真珠をめぐって兄と対立した結果、どろぼう呼ばわりされたうえ、国から追放されてしまった。失意のうちに放浪する彼女は、さらにおそろしい知らせを受ける。祖国の海がうばわれてしまったというのだ。魔法で海水を一滴残らず小石に封じこめ、うばいさったのは、悪名高い魔女シベット。この魔女から愛する海を取りもどそうと、シマーは追跡をはじめた。無事に海を取りかえせば、一族も自分をふたたびむかえいれてくれるだろう。
 数千年にもおよぶ捜索の末、ここ友好の村で、シマーはとうとうシベットを追いつめた。だがそこへ、宿屋で下働きをする孤児の少年、ソーンがあらわれる。シベットに気取られて襲撃されたとき、この少年は年齢と体格に似合わぬ勇敢さを見せ、シマーを窮地から救ってくれた。一瞬のすきをついて逃げだしたシベットをさらに追おうとするシマーに、ソーンは協力を申しでる。このままだまって見すごすわけにはいかない、という少年の心意気に、シマーは思わず承諾してしまう。
 いっしょに旅をはじめたものの、ふたりは対立してばかり。気位が高く、短気で、過去に受けた裏切りゆえにだれも信用しようとしないシマー。一方、力も知識もなく、家族のいないさびしさから常にだれかとつながっていたがるソーン。だが、ソーンのなかになみはずれた勇気と忠誠心を見たシマーは、文句を言いながらもひそかに感嘆する。またソーンも、身も心も強くて皮肉屋のシマーが、じつはつらい体験で傷ついていることを知り、いたわらずにはいられない。
 やはりシベットにうらみを持つ「猛獣使い」との壮絶な空中戦、かわいた不毛の海底をわたる旅、ずるがしこいサルとのだましあいなど、数々の危機を乗りこえるたびに、ふたりのきずなは強まっていく。そしてついに、「嘆きの山」のなかに身をかくしたシベットとの対決となるが……

 正反対の性格でありながら、いつしかおたがいを尊敬するようになり、友情をはぐくんでいくふたりのようすが印象的。一方でアクションの場面は迫力があり、メリハリのきいた作品に仕上がっている。優雅なすがたの竜のほかにも、紙の兵士、孫悟空を思わせるサル、世にもみにくい川の神など、東洋風の味つけの魅力的なキャラクターが数多く登場する。
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商品情報

著者
ローレンス・イェップ
訳者
三辺 律子
刊行日
2003/04/16
種類
単行本
レーベル
ハリネズミの本箱
日本図書分類/Cコード
8097
判型
46判
ページ数
232
重量
350
商品コード
0000150008
ISBN
9784152500083

著者紹介

  • ローレンス・イェップ