川の少年
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ジェスが15歳の夏、画家であるおじいちゃんが心臓発作を起こしてたおれる。だが、がんこで独立心おうせいなおじいちゃんは、予定どおり避暑に出かけると言いはる。それは、おじいちゃんが少年時代をすごした、川ぞいの地への旅だった。家族とともに出発する直前、ジェスはおじいちゃんが故郷で完成させるつもりでいる絵を目にする。「川の少年」という題のその絵は、川をえがいた風景画だが、少年などどこにも見あたらず、ジェスは不審に思う。
一家はおじいちゃんの故郷の、人里はなれたコテージに落ちつく。そばを流れる川に、水泳の好きなジェスは魅了される。しかし同時に、だれかが近くにいるという、不思議な空気を感じてもいた。そしてついに数日後、川でたくみに泳ぐひとりの少年を見かけるが、一瞬目をはなしたすきに、少年はこつぜんと姿を消してしまう。いったいどこからあらわれ、どこへ行ったのか? ジェスはいぶかるが、それ以来、川辺でしばしば少年のすがたを目にするようになる。ジェスはひそかに、彼を「川の少年」と呼びはじめる。
一方おじいちゃんはふたたび発作を起こし、絵筆をにぎることもむずかしくなってしまう。絶望したおじいちゃんは、周囲がすすめるまま、入院する覚悟を決める。だがジェスには、そうなればおじいちゃんは二度と退院できず、あの絵を完成できないまま、心のこりをかかえて死ぬことになるとわかっていた。なんとか説得しようとするジェスだが、がんこに入院すると言いはるおじいちゃんに落胆し、川辺で涙にくれる。そこへあの少年がまたあらわれ、「きみがおじいちゃんの手になってあげればいい」と助言する。
ジェスはおじいちゃんをときふせてふたたび絵に向かわせる。そして少年の助言どおり、おじいちゃんの力ない腕をささえ、絵の具を混ぜ、言われるとおりに働いて、ついに絵を完成させる。おじいちゃんは満足し、ジェスに深く感謝するが、家族はできあがった絵に首をかしげる。あいかわらず「川の少年」らしきすがたはえがかれていなかったからだ。
翌朝、ジェスはあの少年と会いに、川の水源へと出かける。そこで少年は、ジェスにたのみごとをする。自分は今日ここを去るのだが、行く前にどうしても一度、川の水源から海までを泳ぎきってみたい。人生を象徴するかのような川の流れを、みずからたどってみたいのだ。ジェスがいっしょに泳いでくれれば、最後までやりぬけると思う。そう言うと、少年は川に飛びこみ、泳ぎはじめる。ジェスはあわててあとを追う。
やがてコテージの近くまでもどってきたジェスは、ただならぬ雰囲気に気づく。そして、おじいちゃんがまた発作を起こし、河口近くの病院へ運ばれたと知らされる。はげしく動揺するジェス。そのときはじめて、おじいちゃんの絵に「川の少年」のすがたを発見する。一見、川にしか見えないその絵は、じつは流れる水を顔の凹凸に見たてた、少年時代のおじいちゃんの自画像だったのだ。とつぜん、ジェスは悟る。あの少年はおじいちゃんなのだ。ジェスはまようことなく川に飛びこみ、少年を、おじいちゃんを追いかけはじめた……
おだやかで繊細な語り口で、ジェスのゆれる心をていねいにえがきだしている。クライマックスの遠泳の場面は圧巻。そして、悲しいけれどもさわやかなラストシーンには、多くの人が感動をおぼえるだろう。死という重いテーマを、ファンタジックな要素を用いながらみごとに語った感動作。
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