まずご紹介するのは逢坂冬馬
『歌われなかった海賊へ』
。デビュー後2作目となる本書も大きな話題となりました。電子書籍限定でカバーイラストの全体を見開きで収録していますので、ぜひそちらも確認してみてください!
1944年、ナチス体制下のドイツ。父を処刑されて居場所をなくした少年ヴェルナーは、体制に抵抗しヒトラー・ユーゲントに戦いを挑むエーデルヴァイス海賊団の少年少女に出会う。やがて市内に建設された線路の先に強制収容所を目撃した、彼らのとった行動とは?
続いては伴名練
『なめらかな世界と、その敵』
。『日本SFの臨界点』などアンソロジストとしても活動する著者による短篇集。収録作6作はどれも傑作揃いだですが、とりわけ本作のために書かれた「ひかりより速く、ゆるやかに」は先日SFマガジンで発表された「2025オールタイム・ベストSF」国内短篇部門において第2位にランクインしました。
いくつもの並行世界を行き来する少女たちの青春を描く表題作や、ありえたかもしれないもう一つの日本SF史を活写する「ゼロ年代の臨界点」、未曾有の災害が発生した新幹線の乗客と取り残された人々の物語「ひかりより速く、ゆるやかに」など、人の心の距離をめぐる傑作SF集。著者渾身の1万字あとがきを併録。
安野貴博
『サーキット・スイッチャー』
は第9回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作の傑作AIサスペンスです。おもしろい小説を読みたい方、そして著者の近年の活動でその名前を知った方はまずこちらを手に取ってみませんか?
完全自動運転車が急速に普及した二〇二九年の日本。自動運転アルゴリズムを開発する企業の社長が、自動運転車内で謎の男に拘束されてしまう。ムカッラフと名乗る襲撃犯は車の走る首都高の封鎖を要求、応じなければ車内に仕掛けた爆弾が爆発すると宣言する。この男の狙いとは?
池澤春菜
『わたしは孤独な星のように』
をご紹介します。さまざまな媒体で発表されたSF短篇を集成した著者初の作品集で、「読まなければ出逢うことのできない、ここではない世界の人たちの温もり」に満ち溢れた全7篇が収録されています!
叔母が空から流れたのは、とても良い秋晴れの日だった――
静かに滅びゆくコロニーで暮らす女性ふたりが、叔母の弔いのために小さな旅をする表題作。きのこ――菌類を脳に埋め込むことが常識になった世界での青春譚「糸は赤い、糸は白い」。SFプロトタイピングから生まれた、AIをめぐる物語「Yours is the Earth and everything that’s in it」ほか、異国や地球規模の抒情、ユーモラスな快作まで、色鮮やかな傑作全7篇。
宮澤伊織の大人気シリーズ最新作
『裏世界ピクニック9 第四種たちの夏休み』
は今回からセール対象となっています。コミカライズも順調に巻を重ねるなか、深まる鳥子と空魚の関係性の行方は……? 怪異サバイバル、新展開の第9巻です!
恋愛というのは本当につまらないと思う――仁科鳥子と特別な関係になった空魚。けれど周囲に何をどうやって伝えたらいいのかと葛藤の日々。そんななかでも裏世界の探検と研究は進んでいく。夏休み、空魚たちはDS研からの依頼で〈山の牧場〉を使った民間軍事会社の対裏世界用の訓練に参加する
続いては斜線堂有紀
『楽園とは探偵の不在なり』
です。現在最注目の作家による特殊設定ミステリの傑作。孤島×館の本格ミステリときたらミステリファンには大いに訴えかけること間違いなし。「起きるはずのない」連続殺人事件の謎が魅力的で思わず次から次へとページをめくってしまうこと請け合いです!
2人以上殺した者は“天使”によって即座に地獄に引き摺り込まれるようになった世界。過去の悲惨な出来事により失意に沈む探偵の青岸焦(あおぎしこがれ)は、「天国が存在するか知りたくないか」という大富豪・常木王凱(つねきおうがい)に誘われ、天使が集まる常世島(とこよじま)を訪れる。そこで青岸を待っていたのは、起きるはずのない連続殺人事件だった。犯人はなぜ、どのように地獄に堕ちずに殺人を続けているのか。最注目の作家による孤島×館の本格ミステリ長篇
続いては小川哲
『ゲームの王国』(上・下)
をご紹介します。舞台はクメール・ルージュ時代のカンボジア。二人の少年少女を軸にした壮大な物語が展開されます。第38回日本SF大賞&第31回山本周五郎賞をW受賞した傑作長篇をぜひこのタイミングでどうぞ!
サロト・サル――後にポル・ポトと呼ばれたクメール・ルージュ首魁の隠し子、ソリヤ。貧村ロベーブレソンに生まれた、天賦の「識(ヴィンニャン)」を持つ神童のムイタック。運命と偶然に導かれたふたりは、軍靴と砲声に震える1975年のカンボジア、バタンバンで邂逅した。秘密警察、恐怖政治、テロ、強制労働、虐殺――百万人以上の生命を奪い去ったあらゆる不条理の物語は、少女と少年を見つめながら粛々と進行する……まるでゲームのように。
2024年10月に生誕50周年を迎えた伊藤計劃。早川書房から配信されている作品はすべて今回のセールの対象となっています。あらためてこの機会に伊藤計劃作品を読んでみてはいかがでしょうか。
9・11を経て、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。
米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう……彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?
21世紀後半、〈大災禍(ザ・メイルストロム)〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、
人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。
医療分子の発達で病気がほぼ放逐され、
見せかけの優しさや倫理が横溢する“ユートピア”。
そんな社会に倦んだ3人の少女は餓死することを選択した――
それから13年。死ねなかった少女・霧慧トァンは、世界を襲う大混乱の陰に、
ただひとり死んだはすの少女の影を見る――
『虐殺器官』の著者が描く、ユートピアの臨界点。
ぼくは、ぼく自身の戦争をどう終わらせたらいいのだろう……戦争が残した傷跡から回復できないアフリカの少年兵の姿を生々しく描き出した表題作をはじめ、盟友である芥川賞作家・円城塔が書き継ぐことを公表した『屍者の帝国』の冒頭部分、影響を受けた小島秀夫監督にオマージュを捧げた2短篇、そして漫画や、円城塔と合作した「解説」にいたるまで、ゼロ年代最高の作家が短い活動期間に遺したフィクションを集成。
メタルギアソリッド、リドリー・スコット、押井守、そしてウィリアム・ギブスン――個人ブログ「伊藤計劃:第弐位相」を中心に、SF、映画、ゲーム、さらに自らの病について綴られた数々の文章。その独特の語りと、冷静かつユーモアを湛えた世界への視線で、作家デビュー以前から類いまれな才能をうかがわせた2001~2005年までの文章を収録する全記録第1弾。
『虐殺器官』による衝撃のデビュー直後のロング・インタビュー、円城塔との対談、そしてデヴィッド・フィンチャーや「ダークナイト」、『ディファレンス・エンジン』などについて、死の直前まで書き続けられた個人ブログ「伊藤計劃:第弐位相」――2006~2009年までに作家・伊藤計劃が著したフィクション以外の文章、インタビューを集成する全記録第2弾。
「マトリックス」「シックス・センス」「ファイト・クラブ」「トゥルーマン・ショー」「007/ワールド・イズ・ノット・イナフ」――デビュー以前に著者が運営していたウェブサイト「スプークテール」で書き続けられていた映画時評67本+αを、2分冊で完全集成。数々の名作とほんの少しの「トンでもない」作品が、伊藤計劃のあらたな視点と映画に対する大いなる愛情をもって語り直される。第1巻は44本を収録。
「アヴァロン」「ハンニバル」「ブラックホーク・ダウン」「ボーン・アイデンティティー」「マトリックス リローデッド」「イノセンス」――デビュー以前に運営していたホームページ「スプークテール」で書き続けられていた映画時評を完全集成する第2巻。どんな「困った」作品にも、おもわず涙をこぼしてしまいそうになる作品にも、変わらず注がれる伊藤計劃の映画への愛情が、さらなる深化を見せる全24本を収録。