星の歌を聞きながら
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ピアニストだった父親から音楽の才能を受けついだ14才のルークは、どんな曲も自在に弾きこなす、たぐまれなピアノの腕前を持っている。しかしその父親が2年前にガンで亡くなって以来、すっかり心をとざし、いまでは札つきの不良たちとつるんで悪事に手をそめるまでになっていた。
ある日の夕方、ルークは不良仲間とともに、村いちばんの〈お屋敷〉へ行く。住人のミセス・リトルが外出しているあいだに、宝石箱をぬすみだそうというのだ。2階の窓から侵入したルークに、おさない少女の泣き声のようなものが聞こえてくる。ひきつけられるように進んでいくと、やがておびえきった顔の少女に出くわした。ぎょっとしたルークは、そのまま逃げだしてしまい、仲間から叱責される。
翌日の夜中、ルークはふたたび仲間に命じられて〈お屋敷〉にしのびこむが、ミセス・リトルとはちあわせてしまう。ミセス・リトルは意外なことをいいだす。このまえ出会った少女を助けられるのはルークしかいない、またこの家へひとりで来るように、と。ルークはわけがわからないまま外へ出る。仲間には、箱は見つからなかったとうそをつくが、信用されず、明日こそ取ってこいとおどされる。
翌日、仲間との約束をすっぽかしたルークは、報復をおそれ、学校をずる休みして〈お屋敷〉へ向かう。ミセス・リトルは女の子のことを説明する。名前はナタリー。孫娘で、10才になる。娘夫婦が交通事故で亡くなり、生きのこったナタリーは施設に入れられた。失明しているうえ、先天的な障害で4才児ていどの知能しかないため、身内での世話はむりだというのだ。だが施設でのひどいあつかいにがまんならず、こっそり連れだしてきてしまった。それ以来、ナタリーの存在をかくし、だれにも会わずにくらしているのだという。
ミセス・リトルはさらに、ナタリーがピアノの音を異様に好むこと、このところ精神が不安定で、ピアノを聞かないことにはおちつきそうにないことを話し、ルークに、ナタリーのためになんでもいいから弾いてやってほしい、とたのむ。ルークがてきとうに弾きはじめると、あれほどおびえていたナタリーがすこしずつ近づいてきて、ついにはルークの顔にふれながらくすくすと笑うまでになる。
翌日もルークは〈お屋敷〉へ行き、ナタリーのためにピアノを弾く。するとナタリーが、聞きながらあるメロディを口ずさんだ。気になったルークはそのメロディの正体を調べるが、それを発端にやがて少女のおどろくべき秘密を知ってしまう……
主人公の、父をうしなった悲しみからの再生をたて糸に、障害をかかえた少女との魂の交流、音楽やピアノにたいする深い思い、再婚を考えている母との緊迫した関係、などを横糸にした、ゆたかな物語。『川の少年』につづき、身内の死を乗りこえていく若者のすがたが繊細にえがかれている。手に汗にぎるサスペンスもあれば、音楽をめぐる興味ぶかい話題もあり、最後にはさわやかな感動が待っている。
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