ヘラジカがふってきた!
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クリスマスまであと2週間というある日、ぼく、ベルティル・ワーグナーの家に、空からヘラジカがふってきた!「わたしはミスター・ムースともうします」あぜんとするぼくとママと、お姉さんのキキにむかって、ヘラジカはていねいにあいさつした。サンタのそりをひいて飛んでいて、足をすべらせておっこちたというのだ。ママはびっくりしながらも、足をねんざしたミスター・ムースをとりあえずガレージにかくまうことにした。
ぼくのうちにはパパがいない。パパとママは最近、離婚してしまったのだ。去年のクリスマスには、パパがサンタのかっこうをしていた(おかげでぼくは、サンタなんていないと知ってしまったのだけど)。パパのことを思いだすと、むねがもやもやしてくる。パパが帰ってきてくれたら、と思うけれど、だれにも話したことはない。
キキはものすごいものしりで、なんでも理屈っぽく説明する。しょうらいは科学者になって、アカデミー・フランセーズにむかえられるのが夢なんだって。ヘラジカと話ができるなんてまたとないチャンスと、キキはさっそくミスター・ムースに科学的質問をあびせはじめた。
ミスター・ムースによると、サンタは毎年、トナカイがひくすばらしいそりに乗って、世界じゅうの子どもたちにプレゼントをくばりに行く。トナカイはたしかに優秀だけど、いばりやでわがままだ。そこで事前のテスト飛行に借りだされるのが、一段おとった、いわば二軍選手のヘラジカだ。けれど、ミスター・ムースたちヘラジカは、サンタの役に立てることを心からよろこんでいた。いつかは練習でなく、本当にプレゼントをくばるそりをひきたい、それがミスター・ムースの夢だった。
ミスター・ムースがうちにいてくれて、ぼくはうれしくてたまらなかった。あったかくて、おもしろくて、すてきな友だちのミスター・ムースが、ぼくはだいすきになった。でも、しゃべるヘラジカが家にいるなんて、人に知れたらたいへん。毎日ひやひやだ。
クリスマスの2日前、ミスター・ムースの足がようやくなおった。例年どおりおばあちゃんもたずねてきた。そこへとつぜん、サンタがあらわれ、頭ごなしにこういうのだ。「わたしのヘラジカをかえしてもらおう」なんて感じがわるいんだろう。「サンタだって、証明できるの?」むっとしてきくと、サンタはぼくたちのひみつをずばりいいあてた。「あんたたちはおばあちゃんが送ってくれるこげこげのプレッツェルを、いつも池のカモにやってしまってるだろう」ひどい! こんな脅迫をするやつに、ミスター・ムースをわたすもんか! ぼくたちとサンタのあいだは険悪な雰囲気に……
両親が離婚してちょっぴりさみしさを感じている「ぼく」。二軍あつかいされながらも、いつの日か子どもたちにクリスマス・プレゼントをくばることを夢みる、ロマンチストのヘラジカ。じつは横柄なサンタクロース。そのほか、キャラクターがそれぞれにひねりがきいていて、魅力的だ。ユーモアたっぷりの語り口も、ほのぼのとしたイラストもたのしく、夢のあるラストには、だれもがクリスマス・スピリットを感じてしまうだろう。
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