サーカス・ホテルへようこそ!
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母一人子一人で育ったシカゴの少女ハリウッド・ディベッキオは、高所恐怖症で潔癖性。学校ではおくびょうもの呼ばわりされ、本心を打ち明けられる友だちもいない。家に帰っても、仕事でいそがしいお母さんとの関係はいまひとつ。とうとう不満を爆発させたハリウッドは、ずっといだいていた疑問──わたしの家族はいったいどうなっているの?──をお母さんにぶつける。
そのときはきちんと答えてくれなかったお母さんだったが、その後突然、夏休みのあいだおじいさんのところへ行きなさい、とハリウッドに告げる。場所はフロリダ州のサラソタという町。ハリウッドは勝手に決めてしまったお母さんに反発し、ひとりで見知らぬ土地へ行く心細さにふるえあがる。でも、ほんとうにおじいさんがいるのなら……
死ぬほどこわい飛行機の旅にどうにかたえ、ようやくサラソタに着いたハリウッド。ところが出むかえに来たのはおじいさんではなく、わけのわからない、奇妙な人たちだった。連れて行かれた先は「サーカス・ホテル」。かつてサーカスのスターだった老人たちが暮らすホテルだ。ハリウッドのおじいさんは、なかでも大人気だったブランコ乗り。団員たちはハリウッドを熱狂的なまでに歓迎してくれるが、肝心のおじいさんは空中ブランコに乗ったまま、けっして地上におりてこない。ハリウッドの不信と不安はつのるばかり。
そんなある日、サーカス・ホテルに宅地開発事業者がやってきて、コンドミニアムを建てるので、ここから立ちのくように、と団員たちに通告する。ブランコに乗ったままのおじいさんも、頭がおかしいと思われているらしい。このままでは、ソーシャル・ワーカーの手で精神病院に送られてしまう。
そこで一座は結束し、立ちのき前に最後のショウをやろう、と決意する。しかし、おじいさんの空中ブランコの相手をつとめる者がいない。そこで白羽の矢が立てられたのは、なんとハリウッド! 「だって、きみはディベッキオ一家の子どもじゃないか」。みんなどういうわけか、ハリウッドは空中ブランコができると信じているのだ。ほんとうは高所恐怖症なのに。
到着以来、家に帰ることばかり考えていたハリウッドだったが、1冊のスクラップ・ブックを目にして、大きく気持ちが変わる。そこにあった記事は、「空飛ぶディベッキオ一家」の華麗なショウの数々、おじいさん、お母さん、お父さんが空中ブランコをおこなっているすがた、そして「ディベッキオ一家の悲劇」と題された、お父さんの事故死のニュース──それが原因で、お母さんはサーカスからも家族からもはなれていたのだ。
お母さんやおじいさん、団員たちの思いを知ったハリウッドは、ついに空中ブランコの訓練を開始する。あいかわらずブランコに乗ったまま、きびしいながらも的確に指導してくれるおじいさん。応援してくれる団員たち。サーカスという大家族の愛につつまれて、ハリウッドは心身ともに成長していく。そして本番の日……
おくびょうな少女が、いっぷう変わったサーカス団の中で、家族のほんとうのすがたを知り、すこしずつたくましくなっていく。笑いとスリル、冒険と涙にあふれた、ひと夏の成長物語。
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