作家ジョン・ル・カレ逝去のお知らせ  
2020年12月12日、『寒い国から帰ってきたスパイ』『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』などのスパイ小説で知られる作家のジョン・ル・カレが、肺炎のためイギリス・コーンウォール地方の病院で亡くなりました。享年89。

ジョン・ル・カレ(本名デイヴィッド・コーンウェル)は1931年10月19日生まれ。第二次大戦中は陸軍に従軍。除隊後オックスフォード大を一級優等学位で卒業。わずかな間イートン校で教鞭をとる。MI5(イギリス保安部)に勧誘され、その後MI6(イギリス情報部)に移籍し実際に外務省職員として諜報活動を行う。在籍中はドイツ・ボンの領事館に配属された。
1961年に『死者にかかってきた電話』で作家デビュー。外務省職員が自分の名前で小説を出版することは許されなかったのでペンネームを「ジョン・ル・カレ」とした。1963年に発表した第三作『寒い国から帰ってきたスパイ』で英国推理作家協会賞ゴールドダガーおよびアメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀長篇賞を史上初めて同時受賞し、国際的なスパイ小説の大家としての評価を確立した。1984年にはアメリカ探偵作家クラブの、1988年には英国推理作家協会の巨匠賞を授与された。著作の全世界の累計発行部数は六千万部を超える。 その他代表的著作に『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』『スクールボーイ閣下』『スマイリーと仲間たち』『スパイたちの遺産』があるほか、自伝に『地下道の鳩』、評伝に『ジョン・ル・カレ伝』がある。
実際に冷戦下の諜報活動に従事した経験や綿密な取材によるリアルな描写、個性的なキャラクターの造詣でもってして長年イギリスのスパイ・スリラーの巨匠でありつづけた。冷戦終結後においても、武器の国際違法取引を題材にした『ナイト・マネジャー』や、EU離脱以後のイギリスのスパイを描いた遺作の『スパイはいまも謀略の地に』など、晩年に至るまで常に最新の国際情勢をとらえた執筆を行っていた。
日本においてもその評価は高く、1992年刊の「冒険・スパイ小説ハンドブック」のスパイ小説部門で第一位を獲得するなど、高い人気を誇っている。

ここに謹んで哀悼の意を表します。
 
 
日付 : 2020/12/14 照会 : 14618
 
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